2016年から、かれこれ9年。
私は毎月、お墓の掃除を続けています。
今は5月末、小満——草木が茂り始める季節です。
月に一度の掃除では追いつかないほど、草は好き放題に伸びる。
自然の力は、こちらの都合なんてお構いなしです。

中国・紀元4世紀に発明された「二十四節気」という暦があります。
日本の風土には合わないという人もいますが、
地面を覆う草の一年の営みを見ていると、案外ぴったりと重なる気がします。
3月初旬の啓蟄には、地中の虫が目を覚まし、草に生命力が宿る。
4月の穀雨では、草はますます勢いを増す。
そして夏のはじめ、繁殖はピークを迎え、私は毎年困らされる。
けれど、真夏の殺人的な暑さの前には、草も一時、ぐったりとしているように見える。
やがて秋が来て、虫は再び土へ潜り、草は眠る。
そんな巡りが、今年も、来年も、きっと繰り返されていく。
この墓地は、父の生家の近くにあります。
もう誰も住んでいない空き家になって久しく、
私自身は一度も住んだことのない家です。

けれど、ここが私の本籍地。
結婚したことのない私にとって、生まれてから52年間、
一度も変わらなかった「戸籍上のふるさと」です。
子供の頃は嫌いでした。
祖父母と両親の関係はよくなかった。
盆や正月の帰省は、両親のイライラが伝染して、居心地が悪かった。
加えて、当時の町には、どこか田舎臭さと停滞感がありました。
でも、9年間、お墓を掃除する中で、私の気持ちは変わっていきました。
道は変わらない。寺社も変わらない。
けれど、駅は高架になり、踏切がなくなった。
家々は建て替えられ、風景は少しずつ変わっていく。
そんな中で、私の本籍地に建つこの家こそが、
「本当の自分の家」だと思えるようになりました。

この家は、見た目は完全なボロ家です。
20年以上前に中に入ったとき、すでに床が抜けていました。
でも、私はこの家が「魅力的」だと、今は思っています。
玄関の左に応接間と書斎、右に水回り、その奥に居間があるL字型の平面。
きちんと公私を分ける門構えがあり、
現代の家のようにいきなり玄関が見える「無遠慮さ」はありません。

そして今、私は決めています。
この家を私の事業の本拠地として法人化し、
改修して、再生させること。
再生にかかる費用は、ざっと4,000万円。
法人化、相続手続き、リフォーム。
そのすべてを一括で賄えるよう、現金で準備する。
なぜなら、これは私の欲望のプロジェクトだから。
誰のためでもない、売上や利回りのためでもない。
「お金を生み出す家」ではなく、「私を幸せにする家」だからこそ、
借金で手に入れるべきではないと思っています。
だから、私はこれから4,000万円稼ぎます。
いや、稼ぎ切ります。

愛知県春日井市 在住
1973年3月10日生まれ