『我が闘争』は非常に興味深い一冊でした。
堀江貴文氏が自らの半生を振り返り、子どもの頃から両親や周囲と同調できず、ひたすら「闘ってきた」日々が率直に綴られています。
私が堀江氏に対して最も敬意を抱くのは、圧倒的な集中力、そして常に矢面に立つことを恐れずに行動してきた姿勢です。
それを「勇気」や「度胸」と呼びたくなりますが、堀江氏自身はそう表現されることに違和感を持っているようです。
というのも、本人にとっては感情的な意志ではなく、合理的な判断に基づく当然の行動だったからです。
彼の言葉から——
「感情ではなく、ごく当たり前に合理的な判断をして行動した結果、周囲と協調できず、結果的に闘い続けることになった」と読み取れます。
私はこの合理性を、“損得勘定”と受け取りました。
つまり「役に立つか立たないか」「根拠があるかないか」といったシンプルな基準で物事を判断し、その判断に従って、周囲の目を気にせず行動する。その姿勢に、堀江氏らしさを感じました。
特に印象的だったのは、「おわりに」に書かれた一節です。
かつて彼は「人の気持ちはわかるはずがない」と断言していましたが、服役という経験を経て、「人の気持ちはわかりません。でも、できる限り分かろうとします」と姿勢を変えています。
そして、こう結びます——
「今、やるべきことをやるしか、幸福になる道はない。」
この本の初版が出版されたのは2015年。
そこから10年が経った2025年現在も、堀江氏は数々のプロジェクトに取り組み続け、その集中力は衰えることがありません。
私の勝手な印象では、多くの人が堀江氏を「異端」と見ているように思います。
ただ、少なくともこの著書を通して感じられたのは、**本人自身は特別なことをしているという意識はなく、「当たり前のことを、素直に実行しているだけ」**という認識でした。
そしてもう一つ、私がこの本から受け取った感情があります。
それは、「自分という人間を、少しでも理解してほしい」という堀江氏の静かな願いです。
論理で武装した言葉の奥に、そうした人間味を感じさせる一冊でした。
参考文献
堀江貴文『我が闘争』(幻冬社)

愛知県春日井市 在住
1973年3月10日生まれ